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あいつと俺との関係は
言うなればハブとマングース、犬と猫、トムとジェ○ー(違)
つまり、天敵…のようなもの。
― 彼にとっての大きな誤算 ―
キーンコーンカーンコーン…
授業終了のチャイムとともに、学校中がいっせいにざわめき始める。
あるものはまっすぐ家へ、またあるものは部活へ…
そんな生徒たちの溢れる廊下で、どこからか甘い匂いがかすかに漂っていた。
2−Cの教室。
黒板にはでかでかと『自習!!プリント要提出』という字が書かれている。
「よし!じゃあ行こうZeいのり〜」
「ちょ、ちょとまたんね虎鉄!!まだ自習のプリント提出してなかとよ!」
今にも教室から出て行こうとしていた虎鉄は、猪里の言葉に立ち止まる。
「あ…っと、いけNe」
あわてて前でプリントを集めていた生徒に渡しに行く。
「Fu〜あぶなかっTa…」
「あの先生、提出物にうるさいけんね〜」
本当に危機一髪、という感の虎鉄に猪里が苦笑して言う。
虎鉄が苦い顔をして、
「まったくだZe。何度あいつにどやされたことKa…」
「それはちゃんと出さん虎鉄が悪かよ」
呆れたようにため息をつく猪里に少しむくれて虎鉄がドアを開ける。
「そんな事言っても、あいつは一度に大量に…」
出しすぎRu、と続けようとした言葉は、しかし目の前に突然現れた人物に遮られた。
虎鉄と猪里がぎょっとして固まる。
相手の方も驚いたのか、ドアを開けようとした体勢のまま固まっていた。
その相手とは。
3-Aの委員長であり、家庭科部の部長も務めている。
無表情、無口、無愛想…それなのに何故か人望の有る不思議な人物。
なぜそんな彼がここにいるのか。
混乱した頭で二人がそんな事を考えていると、一足早く驚きから抜け出したが、
「…お前達今から部活か」
「あ、ハ、ハイそうでSu!」
ほとんど疑問符のついていない疑問をぼそり、と呟いたに、虎鉄が慌てて返事をする。
はそうか、と頷いて無言でずいっと手に持っていた大きな包みを差し出す。
その袋からはかすかに甘い匂いが漂っていた。
「えーっと…これHa…?」
「クッキー、その他」
「???」
簡潔すぎるその答えに虎鉄と猪里がさらに?マークを浮かべる。
も少し要約しすぎたと感じたのか、さらに言葉を重ねる。
「家庭科部有志から、野球部への差し入れだそうだ」
「えっ!?」
家庭科部からの差し入れ…
それは日々の練習でへばっている部員達にとって心のオアシス。
「やっTa〜!!」
「いっつもありがとうございます!」
「いや…」
手放しで喜ぶ二人に、がふ、と目を細める。
何というか、子供を見守る父親の目というか…
普段はあまり見られない珍しい表情に、虎鉄と猪里の動きがピタリと止まる。
「(わ、笑った!?笑ったのKa今!?!?)」
「(た、多分笑ったんじゃなかとか!?うわ〜うわ〜…初めて見たっちゃん)」
ぼそぼそと小声でやり取りをかわす二人に、が訝しげな視線を注ぐ。
それに気づいた虎鉄が慌てて、
「そ、そういえば先輩、どうして俺らのところに来たんですKa?」
「あ、そういえばそうたい…」
ただ差し入れを渡すだけなら蛇神や鹿目の方が近かったはずだ。
なんと言っても同じクラスなのだから。
「……」
はその質問に無言でため息をつく。
それからポツリと、
「来るからだ、あいつが」
「?あいつ…?」
弱点などなさそうなにも、誰か苦手な人物がいるのだろうか。
少し興味を引かれて虎鉄と猪里が質問しようとした、その時。
ばたーん!!
派手な音を立てて後ろの扉が開かれる。
そこに立っていたのは…
「見つけたよ君!!さあ!今日こそ野球部に入ってもらうからね!!」
「「キャ、キャプテン…!?」」
そう、そこにいたのは野球部主将 牛尾御門(18)
いつにもましてきらきら輝いていた。
「…チッ!見つかった」
は忌々しげな顔で盛大に舌打ちすると目にも留まらぬ速さで廊下に躍り出、
シュバッ!
お前は人間かとつっこみたくなるような効果音を立てて、音速の速さで走っていった。
途中で先生が『廊下は走るなー!!』とか叫んでいる。
そういう問題だろうか。
「ふ、ふふふ…」
「キャ、キャプ…?」
突然ユラリ…と妙なオーラを出し始めた牛尾に、猪里が恐る恐る声をかける。
と、牛尾がすっと顔を上げて、
「…逃がさないよ」
ダッシュ!
牛尾もまた音速の速さでのさっていった方向にダッシュをかけた。
先生がまた『廊下は…走るなーーー!!』と叫んでいる。
その後に『すみません!』という言葉が聞こえたあたりが牛尾らしいといえば牛尾らしいか…
残された虎鉄と猪里はどこか遠い目をしてそれを見送っていた。
「Na〜猪里…俺時々キャプたちのことが分からなくなるんDa…」
「奇遇やね、虎鉄。俺もそうたい…」
そんな事を呟きながら。
一方追いかけっこ組み(違)は
「…っ追いかけてくるな!」
「君が逃げるからだよ!!」
「止まったらお前に捕まるだろうが」
「うん、100%つかまるね!」
「いい笑顔で言うな!」
猛スピードで走りながらこんなやり取りをしていた。
走りながら叫んで、よく息が切れないものだ。
は小さく舌打ちをして
バッ!ピシャン!ストッ
開いた窓から外に出、ついでに窓を閉めてから地面に飛び降りた。
「君!!」
君はスタントマンかい!?
「五月蝿い!」
何とでも言え!!
怒鳴り返しながらはそもそも何でこんなことになっているのか、と考えていた。
多分そのきっかけは去年の夏…
- 回想 -
保健室。
俺はミンミンとセミの鳴く声を聞きながら別途の中で目を覚ました。
「…もう、放課後、か」
まだ覚醒しきっていない頭を軽く振って上半身だけむくり、と起こす。
なぜ保健室で寝ていたのかというと…
炎天下の中、少々立ちくらみを起こしてよろけただけで心配性のクラスメイト二人に
保健室まで引きずってこられたためだ。
『保健委員のくせに自分が倒れてどうするのだ!!』とか言われながら、ずるずると。
しかし保健の先生が出張中で留守だったため、これ幸いと授業に戻ろうとしたら
やけに必死に止められたり、やけに毒舌で怒られたりして、今に至る。
「…あいつらも相当心配性だな…」
何で俺にかまうんだか。
クラスメイトの面々を思い出して、少し苦笑した。
静かな保健室に外から元気のいい掛け声が響く。
野球部、だろうか。
そういえばあの二人も野球部だったな。
確か…蛇神と鹿目という名前だったか。
そんな事を考えているとガラリ…とどこか遠慮がちに扉を開ける音が聞こえた。
誰か怪我でもしたのか?
そう思ってベットから下り、さえぎっていたカーテンをシャッと引く。
「!?」
誰もいないと思っていたのか、扉のところに立っていた人物が驚きの表情でこちらを見た。
金色のきらきらした髪に、緑の目。
その人物は十二支野球部のユニフォームを着ているようだった。
…あー…外人…?
ふっとそんな考えが頭をよぎるが、すぐにその考えを否定した。
十二支に海外留学生が来たなんて聞いたこと無いからな。
「どうした。」
そう問いかけると野球部員は何故か一瞬ビクッとして、
「あ、いや、ちょっと腕を怪我して…」
「…」
何でびくつくんだ。
内心首をかしげながら野球部員の腕に視線を移すと、左腕の二の腕あたりに血がにじんで
いるのが見えた。
無言で手招きをすると野球部員がおずおずとこちらに歩いてくる。
何か言いたげな野球部員を椅子に座らせて傷の具合をみた。
出血量は多いけど…傷は浅いな。
傷口にも汚れは無し。
それを確認してから薬品棚のほうに行き、消毒液とガーゼ、包帯を取り出す。
本当は先生いないときにこんなことやっちゃ駄目なんだろうけどな。
まあ、一応保健委員だし。
消毒液以外を机の上においてとすっと野球部員の座っている椅子の近くに腰を下ろした。
「ちょっと染みるぞ」
「…っ」
野球部員が顔をしかめるのもお構いなしでてきぱきと傷を手当てしていく。
「…よし、と。家帰ってからまたちゃんと見てもらえよ」
それから傷口は清潔に保つこと。
部活も今日はもうやめとけ。
ぼへーっと手当てされた箇所を見ていた野球部員がその声にハッとして、
「ありがとう。…手当て、上手いんだね」
「別に」
使ったものを元の位置に戻してパタム、と薬品棚の扉を閉める。
「いや、すごく手際がよかったよ。助かった。…ありがとう」
包帯に手を当てて、もう一度かみ締めるようにそう言う相手に俺は苦笑する。
そんなに、礼を言われるほどの事でもないと思うんだけどな…
と、そのときふと机に上においてある名簿に気がついた。
「あ、と…。お前、名前は?」
「え?」
「利用者名簿に名前書いとくから、名前」
きょとんとしている相手の前でトントン、と名簿を軽く叩く。
相手は驚いた顔で、
「僕の名前、…知らないの、かい?」
ん?
「…同じクラスだったか?」
こんなやつがいれば一目で気がつきそうなもんだが。
「いや、そうじゃなくて…」
言われてじっと相手を見るが、
「…生憎と、知らないな」
俺がそう言うと目の前の野球部員はしばらくぽかん、としたあと急に満面の笑みになった。
な、何だ?
やけに嬉しそうな顔ですっと右手を差し出すと、
「僕は牛尾御門って言うんだよ。君の名前は?」
「……、」
反射的に、出された手を握り返しながらポツリ、と呟く。
「……君、か。…これからよろしくね!」
「……これから…?」
何だ『これから』って。
何だこのやけにきらきらしたオーラと笑顔は。
さっきまでのしおらしげな顔はどこ行った。
笑顔全開の牛尾御門にブンブンと振られている腕を一瞥する。
目の前に笑顔に少々の嫌な予感を覚えながら…
- 回想終了 -
「…そういえば、あれからしばらく後だったか。牛尾の勧誘が始まったのは…」
いったい何が気に入ったんだか。
スタタタタと走りながらが大きなため息をつく。
「何ため息なんかついてるんだい?」
「!?」
突然背後から聞こえた聞き覚えのありすぎる声に、思わずビクッとする。
バッと後ろを振り返ると、そこにはあの時と同じ、やけに嬉しそうな笑顔の牛尾御門が…
「何で、お前が…っ」
「はははやだな君。君の真似して飛び降りてきたからに決まってるじゃないか!」
「あっ…危ないことをするな!」
「って、君が先にしたんだろう!?」
「…」
もっともだ。
言い返されてぐっと言葉に詰まる。
それから小さくため息をついてぼそっと呟く。
「…また、怪我でもしたらどうするんだこいつは…」
「!!」
キキィ!
突然背後から追いかけてきていた牛尾が、急ブレーキをかけてとまった。
不審に思っても急停車する。
「……」
「?」
「………」
微動だにしない相手をさすがに心配したのか、が牛尾のほうに近づいていく。
「…どうした?」
顔を覗き込もうとしたその瞬間。
ガシィッ!!
勢いよく腕を掴まれる。
「なっ!?」
「油断大敵だね、君?」
いつにもまして嬉しそうに牛尾が笑いかける。
…こいつ、はめたな…
がげんなりと掴まれた腕を見た。
ちょっとやそっとの力じゃ抜け出せないような力で掴まれている腕を。
はあぁ〜、と心の底からため息をついて、
「あー参ったよ。降参だ」
もう煮るなり焼くなり好きにしてくれ。
その少々投げやりなの言葉に、牛尾は少しの間きょとん、として
「えっ?いいのかい?」
「やっぱりやめておく」
途端にまたきらりと輝いた笑顔に、が慌てて訂正を入れる。
「なんだ…残念」
おいおい…何心底残念がってるんだよ牛尾御門。
はひく、と引きつった笑顔を浮かべた。
「う〜ん、じゃあ部員になってもらうのは諦めて…」
「って、おい。聞いてたか?」
俺の話。
牛尾はかまわずにニッコリと微笑みかけて、
「君には野球部のマネージャーになってもらおうかなv」
…………………(思考テイシチュウ)
「……は?」
「だから、マネージャーvv」
休憩の時にはドリンクとかタオルとか渡してくれて試合中には
『キャー頑張って牛尾君ー!』
とか言ってもらって…(笑)
それから部活の終わったあとには二人で僕の恋人(グラウンド)の整備を…
あれ?どうしたんだい君??
「…………………誰が…」
スパッ
は勢い良く掴まれた腕を振り解くと、
「そんなことやるか―――――――――――っ!!」(ダッシュ)
音速よりも早く遥か彼方へと走り去っていった。
残された牛尾はしばらくぽかん、としてからくすくすと至極楽しそうに笑う。
普通、野球部員に、とか野球部のマネージャーに…何て言ったら、皆自分から進んで
引き受けるっていうのに…
「だから…面白いんだよ、君は」
思い出すのはという人物に初めて会った時のこと。
あの頃もうすでに僕の知名度はかなりのものだったらしい。
だから、会う人会う人皆が皆自分のことを知っている、という状況に内心少しうんざり
していたのだ。
そんな時だったから、誰もいないと思っていた保健室に人がいたときは、…驚いた。
また「野球部の牛尾御門」と言われるのか、と。
でもそこにいたのは心酔しきった目で僕を見つめる生徒でも、やっかみ半分嫉妬半分で
こちらをねめつける生徒でもなかった。
彼はただ静かな表情で、こちらを見つめて。
その目には特に何も映らずに。
あまりにも静かだったから、一瞬生きてる人間じゃないのかと思ってしまったぐらいだ。
だから突然声をかけられてビクッとしちゃったんだけど。
そのまま特に何を聞くでもなく、ただ黙々と僕の傷を手当てしてくれた。
その静かな時間が、当時の僕にとってどんなに心安らげたことか。
しかも、僕の名前も何も知らないって言うんだから。
…まったく、僕がどんなに嬉しかったか…
友達づきあいを(一方的に)始めて分かったけど、君は思ったほど無表情でも無口でもない
みたいだった。
聞かれたことには答えるし、言うべきところではちゃんと意見も言う。
時には微かだけど、微笑んだりもする。
ますますいい友達になれそうな気がしたよ。
きっと君がいればもっと楽しいだろうと思って野球部に勧誘してみたりもしたけど、
…君、全力で断るんだからなぁ。
おまけに逃げたりするから、つい意地になって追いかけちゃったじゃないか。
まぁ、でもそれが思いのほか楽しくて今に至るわけだけれど。
「難攻不落の城、陥落への道は遠そうだなぁ…」
牛尾がふう、と小さなため息をつく。
「…ま、いいか。そのほうが陥落したときの喜びも一塩だからねv」
牛尾がそう呟いた時、逃走中のの背中に悪寒が走ったとか。
彼の苦難はまだまだこれからのようである。
…合掌…
+++++++++++++++++++++++++++
相互記念品!
またまた春雷様に捧げますv
虎鉄さんと猪里さんを前面に押し出すつもりが、何故か主将が…
…主将…(涙)
あああこんなへっぽこでごめんなさい〜!
文章力アップさせられるように精進いたします!
春雷様、相互ありがとうございましたvv
牧羊犬
