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Unexpected



この足を信じてあげないと 僕が信じなければ、誰が信じるというのだろう 僕は、信じてあげないと
昨日、不思議な人と出会った。 監督の甥っ子さんで、名前はくんって言うらしい。 やさしそうな顔、してるのに、いきなり監督に銃を突きつけたりするんだよ。 くんは本気じゃなかったんだけど… 僕、慌てて思わず全速力で体当たりしちゃったんだ。 …今思うと、あれは相当痛かったんじゃないかと… いくらなんでもやりすぎたかな? 謝ったらくんは笑って許してくれた。 大丈夫大丈夫、って。 僕、なんだかこの笑顔好きだなあって思ったら、何だか嬉しくて思わず抱きついちゃったよ。 ちょっと驚いた顔してたけど、可笑しそうに笑って頭撫でてくれた。 ああ、なんて… 優しい、手。 「今日も楽しく部活部活〜♪」 うきうきと鼻歌を歌いながら着替えてると、横にいた子津くんがはは、と笑った。 「本当に兎丸君は部活が好きっすね」 「うん!だって走るの楽しいし、お猿の兄ちゃん達がいっつも面白いし♪」 「ほほう、スバガキ。よく分かってるじゃないか」 横から突然にゅっとお猿の兄ちゃんが出てくる。 「ふっ…俺の神業とも言えるギャグに目をつけるとは、お前もなかなかだな…」 そう言ってポーズをつけながら渋く決める兄ちゃんを犬飼くんがスパァン!とハリセンで叩いた。 あはは、兄ちゃんたちまたやってる。 「なっ、何しやがるこの犬っころ!!」 「とりあえず…うざい」 スパァン!!! 「グボッ!!」 もういっちょ、とばかりにハリセンで殴られる兄ちゃん。 そして吐血……………吐血!!? バッと犬飼くんの手元を見ると…あ、あれ紙のハリセンじゃなくて… 「こ、鋼鉄製!!?」 しかもJISって書いてあるよ!!!? そんな危険なもの売ってるの!!? *JISマーク…日本工業規格。工業標準化によって制定された鉄工業品の規格。By広辞苑 「さっ、猿野くーん!!」 ぴくぴくしている兄ちゃんに泣きながらかけよる子津くん。 兄ちゃんはフ、と笑って 「子津…花畑の向こうに、…両手いっぱいの桃太郎が…」 がくっ 「も、桃太郎!?桃太郎がどうしたんっすか―――!!」 しかも両手いっぱいってなんっすか!!? 子津くんは、わ―――!!と言いながらがたがたしてる。 う、うん…いつもの光景…(汗) 僕はふ、とその光景から目をそらすと横で着替えているシバくんの方を向いて、 「ね、シバくんシバくん」 「…?」 シバくんは、何?って言う風にコクン、と首をかしげる。 「昨日の、くん、あれから何だか慌てて帰っちゃったけど…またくるかな?」 「……(フルフル)」 「そうだね、僕もわかんないや」 「………?」 「え?監督に聞きにいくの?うん!そうしよっか!!」 「……(ニコリ)」 「前から聞こうと思ってたんだが…お前ら…なんで会話できるんだ?」 「わっ!!」 さっきまでそこで死んでた兄ちゃんがもう復活してそこに立っていた。 心底不思議そうな顔して。 「う〜ん。何でって言われても…」 どう説明していいのやら…。 僕が困っているとお猿の兄ちゃんはまあいいや、と言って、 「それより、お前らあのちびっこの事聞きにいくのか?」 ちびっこ…兄ちゃんはなぜかくんのことをそう呼ぶ。 「うん。また来ないかな〜、と思って」 「そうっすね〜。ちょっと初めは怖い人かと思ったっすけど…」 結構いい人そうで安心したっす。 ほわわ、と笑うのは子津くん。 「そうだよね!僕もそう思う。」 「まあ、確かに彼は興味深い人物ではありますが…」 辰羅川くんが眼鏡をクイ、とあげながらちょっと複雑そうに言った。 その表情が苦い気がするのは、たぶん昨日の自己紹介のときにもみ上げを くいくいされたからだと思う。 ……確かに、ちょっと引っ張ってみたいかも… 「まあ…来るなら相手をしてやらなくも無い…」 ポツリ、と横から呟いたのは犬飼くん。 「あいつはツッコミどころが満載すぎて疲れるぜ」 兄ちゃんはそんな事言いながらも、どこか嬉しそうに見える。 犬飼くんがプ、と笑って、 「お前には負けるけどな…」 「何!?俺のどこがつっこみキングだ!!?」 「だ、誰もそんなこと言ってないっすよ!!」 またけんかになるのかな〜と思って見ていた、その時 ガチャッ!バッタン!! 突然ものすごい勢いで誰かが入ってきた。 もー誰さ、そんなに急いで…………って! 「くん!」 「「「「「(君)!!?」」」」」 「あ、野球部一同…っても一年だけか」 ビ、ビックリした…。 だってそこにいたのは今まで話してたくんだったんだもん。 でも何だか何かに追いかけられてた、みたいな表情してた… 僕らに気が付くと、すぐにやわらかい顔になったけど。 「相変わらず、いい驚きっぷりだなー」 そう言って可笑しそうに笑う。 本当に、君だ…!? 僕はつい嬉しくてくんに飛びついた。 「今ね、ちょうどくんの事話してたんだよ〜。ね、ね、練習見にきたの!?」 くんは昨日みたいにちょっと驚いてから、まあな、と言ってあの笑顔で笑ってくれる。 それは昨日と同じ笑顔… ああ、やっぱり、この笑顔好きだな〜… 僕がそんな事を考えていると横からお猿の兄ちゃんが、 「よーうちびっこ!せっかく来たんだからトンボかけつきあえや〜」 ニヤリ、としながらくんの肩に手を置くと、ものすごいスピードでグラウンドまで連れて行ってしまった。 うひょひょひょひょと言う変な笑い声を残して… 「さっ、猿野くん、待ってくださいっす!!」 「ああ〜!ずるいよ兄ちゃん!!いこ、シバくん!!!」 早くしないと兄ちゃんにくん取られちゃうよ! 僕はすばやくユニフォームに着替えるとシバくんの腕を取って兄ちゃんたちの後を追った。 えっと…くんたちは… 「よーし!新入りはこのトンボで素振り1000回なー」 「無茶言うな―――!!!」 新入りって、お前もだろうが!! いた!!  グラウンドの真中の方でくんと兄ちゃんがなんだか漫才みたいな事をしている。 僕はそこまで猛ダッシュで走っていくとぴょーい、と兄ちゃんの背中に飛び乗った。 「ぅおっ!?」 「もーひどいよー!!くん連れてっちゃうなんて!!ね、シバくんもそう思うよね!」 「………(コクン)」 後からきた司馬君も兄ちゃんの顔をじいっと見ている。 兄ちゃんはニヤ、と笑って、 「何だ、スバガキも司馬もずいぶんこいつに懐いてるな」 「だってくんは優しいんだもん〜」 ねー、とシバくんに笑いかける。 そしたらシバくんも同意するように少し微笑んでくれた。 「優しいね〜…」 兄ちゃんが隣にいるくんをまじまじと見て、 「まあルックスは俺のほうが一億倍上だな!!」 「ぶ〜!何言ってるのさー!!」 くんのほうが上だよぅ! 「な…なんで俺と猿野の容姿自慢大会になってるんだ…?」 「……………(汗)」 「猿野くーん、みんなーーー!!」 あ、子津くんの声だ。 くるっと後ろを向くと走ってくる子津くんと犬飼くん、辰羅川くんの姿が見えた。 「皆早いっすねー。」 「猿…とりあえずお前は埋まっとけ」 犬飼くんがすっ…とショベルを持ち出す。 ええ!?それ一体どこにもってたのさ!? 「へっ!逆に返り討ちにしてやる!!」 きしゃー!とかよくわからない声を発しながら兄ちゃんが犬飼君に襲い掛かった。 殺し合いになっちゃうよぅ―――〜!! 「わああー!!猿野君、だめっすよ!」 「犬飼君も!人殺しはおやめください、人殺しは!!!」 子津くんと辰羅川くんが必死で止めたおかげでどうにかその場は静まる。 両方共チッ、とかケッ、とか言ってたけど… ふう…よかった… 「…お前らも大変だな…」 ぽつり、と漏らされたくんの一言に、止めに入った二人がくっ…と涙をこらえていた。 う、うわあ…二人とも実は辛かったんだね… そんなこんなで、結局くんはトンボかけを手伝う事になった。 向こうの方でまた喧嘩を始めたらしい兄ちゃんと犬飼君の声が聞こえる。 またやってるよ〜と思ってたら遠くから、 「ピノ〜!これ、どうやって使うんだ?」 声の方を見るとくんが片手でブンブンとトンボを振り回していた。 あああ〜!あぶないよぅ!! 止めようとしたら、喧嘩していた兄ちゃん達が投げたらしいハリセン(?)の流れ弾がくんの ほうへ …いや、流れ弾って言うか……………………超豪速球!!!? ごすっ! 「〜〜〜〜〜ッ!!」 声にならない声を発してうずくまるくん。 「くん!」 僕とシバくんは慌ててくんの方に近寄っていった。 「くん、大丈夫!?」 「あー、ピノに司馬ー…かなり痛いかな」 頭をおさえながらくんが言う。 うわあ…涙目だ… 「…………」 シバくんがす、と頭をおさえている手を退けて殴られたらしきところをじっと見てた。 と、その眉がぐっとよる。 「…?…?どうしたんだ、司馬」 「あのね、結構たんこぶが大きいから、早く冷やした方がいいんじゃないかって、シバくんが」 「…………(コクン)」 くんは驚いたように、 「え、そんなに大きい?」 「…(コクン)」 「う〜ん………………じゃあとりあえず、あのエテ公達をぶん殴ってこようかな」 何か考え込んだと思ったら、突然しゅっしゅっと素振りをしながら、いやに爽やかに笑って そんな事を言い出すくん。  「ええ!?だ、だめだよぅ!!」 「……!!(ブンブン)」 その笑顔がやけに怖く感じられて慌てて止めに入る。 確かにあの二人のせいだけど、殴るのは…!? するとくんははは、と笑って、 「大丈夫だよ、冗談だから」 あー、かわいいなー、お前ら。 こんな弟ほしかったな〜。 そう言って僕とシバくんの頭をくしゃくしゃと撫でた。 その手が気持ちよくて、つい聞き逃しそうになったけど… 「くん、可愛いって言わないでよ〜!」 「…?ダメだったのか?」 「だめだよー」 だって僕、これでも男だし… 「と、そうか…そうだな。うん、ごめん。」 素直にそう謝ってまたぽふぽふと頭を撫でてくれた。 この手、やっぱり好きだな… 「謝ってくれたから、もういいよ♪」 「ん、サンキュ。…司馬も、ごめんな。」 「…………///(フルフル)」 「えへヘ。シバくんは怒ってないってさ!」 僕がそう言うとくんは安心したようにそっか、と笑った。 あ、初めて見る笑顔だ 「…………(クイクイ)」 「あ、そうだね!早く頭、冷やさないと!!」 こっちだよ!と言ってシバくんと一緒にくんを引っ張っていく。 「お、おい、ちょっと…!!」 後ろで何だかくんが慌ててた気もするけど、気にせずにバビュン!と走った。 向かうのはマネージャーさんたちのところ。 「凪ちゃ―――ん!」 「え?あ、兎丸さんに司馬さん…と、そちらの方は…?」 「見かけない顔だな」 「初めて見る人…かも」 凪ちゃんの横にはもみじちゃんやヒノキちゃんもいた。 あ、そっか。 凪ちゃんたち、別の仕事があるとかで昨日いなかったんだ。 「えっとね、この子はくんだよ〜!監督の甥っ子なんだって」 ちなみに16歳! 僕が紹介すると皆すごく驚いた顔をした。 「ええ!?監督の?」 「…………」 凪ちゃんはものすごく驚いて、ヒノキちゃんは首をかしげてくんを見ている。 もみじちゃんはじい―――っくんを眺めて、 「マジかよ!…にしては似てねーな…」 三人分の視線をいっぺんに受けて、くんは困ったように笑う。 「…俺は母さん似らしいから…」 「あ、そうか!似てない姉弟だったのか。…よかったな、お前…」 あのエロ監督に似ずにすんで。 あんまりにもしみじみとそう言うので僕達は顔を見合わせて少し笑った。 「あ、自己紹介が遅れました。私は一年マネージャーの鳥居凪と言います。」 「同じく一年の清熊もみじ。で、こっちが…」 「猫湖檜です…よろしく…」 「こっちこそ、よろしくな」 ヒノキちゃんがおずおずと右手を差し出してくるのに微笑んで握手する。 うわー、ヒノキちゃんにしては珍しい… 凪ちゃんももみじちゃんもビックリしてるよ。 くん、優しそうだからヒノキちゃんも安心したのかなー。 「と、それで兎丸、なんか用事があったんじゃなかったのか?」 「あー!!そうだった!あのね…」 僕が慌ててさっきの事を話すと皆も途端に慌てだした。 「それなら早く冷やさないと…」 「じゃあ俺氷もらってきてやるよ!」 「い、痛そう…かも」 くんは皆がテキパキと用意をしてくれるてるのを見て困ったように、 「あー、そんな、一生懸命してくれなくても大丈…」 「どこが大丈夫なのさ!」 ちゃんとそこに座って! 僕がびしっと一刀両断するとくんは苦笑して言う通りにしてくれた。 まったくもう…くん、自分の事には無頓着なのかな? 「…いてっ」 「これは…だいぶ腫れてますね…」 凪ちゃんが心配そうに呟く。 とりあえず、もみじちゃんが戻ってくるまで濡れタオルで頭を冷やしてるんだけど… あ、戻ってきたみたい。 「おーい、もらってきたぞ〜!」 「あ、もみじちゃん、すみません、取りに行かせてしまって…」 「いいって。それより…だいぶ腫れてるけど、保健室行かなくて大丈夫か?」 もらってきた氷で頭を冷やしながらくんがいたたた、と言いながら、 「や、でも俺ここの生徒じゃないし、…それに…」 そこでいったん言葉が途切れる。 …? 「それに…?」 「あ、うん、それにさ、あの保健室の薬くさいにおいかぐと反射的に注射思い出して…」 俺注射苦手なんだよな〜、と苦笑するくん。 もみじちゃんに「我侭言うなー!」と活を入れられて、可笑しそうに笑ってた。 さっき、一瞬悲しそうな顔してた気がしたんだけど… 「僕の気のせい、なのかな…?」 「…………?」 思わずぽつりと呟くとシバくんが『どうしたの』って不思議そうな顔して覗き込んでくる。 「あ、ううん、なんでもない」 「……?(ニコリ)」 シバくんはまだ不思議そうだったけど、一応納得してくれたみたい。 と、横の方で活を入れてたもみじちゃんがとうとう痺れを切らしたように、 「おらー!力ずくでもつれてくぞ!!」 「ちょ、ちょっと…!」 あああ!?くん、引きずられていきそうになってるよ!! しかも後ろから腕で首、がっちりつかまれてる! 凪ちゃんが焦って、 「あ、あの、もみじちゃん、あんまりけが人に無茶は…」 「でも凪。こいつ、こうでもしないと絶対保健室どころか病院も行かないぜ?」 ごもっとも。 さて行くか、とさらにぎゅっとくんの首をつかんだもみじちゃん。 ああ〜そんなに絞めちゃダメです!と凪ちゃんが慌てて止めに入ろうとした時、 「ああ――――――!!!ちびっこ!?凪さんと仲良く何してやがる!?」 「HAHAH〜N。ジェラシックボーヤはみっともないZe」 この声は、間違いなく… 案の定、怒りマークを額に浮かべた兄ちゃんと相変わらずくねくねしてる虎鉄先輩がいた。 あ、もう他の先輩達も来ちゃってたんだ。 「…またうるさいのが来たぜ…。」 もみじちゃんがうんざりしたように呟くのが聞こえた。 もみじちゃんは虎鉄先輩が苦手みたい。 「仲良くって…俺は、ただ手当てしてもらってただけだろうが」 ちなみに今は清熊さんにしめられてるけど 「N〜?はどっか怪我したのKa?」 そう言ってひょいひょいっとくんを眺め回す。 「ああ、うんちょっと…っていうか、あんまりじろじろ見ないでくれ…」 居心地悪い くんが困った顔でため息をついた。 「居心地が悪いと言えば…清熊さん…そろそろ…」 「だめだな。お前このまま保健室行かない気だろうが」 「うっ……」 ……図星だったんだね…くん… 「なんだ〜?お前ら、何騒いでやがる」 ふわあ〜、とあくびをしながら現れたのは羊谷監督。 ん?とそこにいる君に気がついて、 「、お前何やってるんだ?」 ずいぶんとうらやましい状況にいるじゃねーか。 ニヤリ、としながら言う監督にくんは呆れたようにあのなあ…と言った。 もみじちゃんの顔は真っ赤。 きっとこのエロ監督!とか思ってるに違いない。 「監督、さんが頭に怪我を…」 もみじちゃんが騒ぎ出す前に凪ちゃんがそう監督に言うと監督は、はぁ〜ん、と呟いて、 「どうせ、こいつ保健室に行きたくないっていったんだろう」 で、もみじ嬢に力づくで連行されそうになってる、と…。 「すごーい!監督、どうして分かったの!?」 「なに。だてに何年もこいつの叔父やってるわけじゃねえよ。」 事も無げにそう言ってふーと煙草を吐き出す。 「じゃあこいつの注射嫌いも治しとけよな」 もみじちゃんがまだ怒っているように監督をギロ、と睨んだ。 監督は一回瞬きをしてから君をチラリ、と見て、  「…ふん。注射嫌い、ね…。そいつは、こいつ自身で治さねーと…意味ねーわな」 「え〜そうなの〜?」 僕も注射嫌いなんだけどなぁ〜… ね、くんと言って振り返ると何だか眉間にしわを寄せて監督を見つめるくんが… 「くん、本当に注射嫌いなんだね〜」 あはは、と笑うとくんがはっとしたように笑って、 「ああ…まあな」 あの針が…と言ってフルフル首をふるくんが何だか可笑しくて皆がどっと笑う。 監督だけが苦笑して、よそを向いたまま煙草を吸っていた。 後でくんに『禁煙』って煙草、没収されてたけど… 結局くんは保健室には行かず、そのままベンチで練習を見ていることになった。 本人はあっちの芝生の方でいいって言ってたんだけど、もみじちゃんに 「保健室行かないならせめてここでじっとしてろ!!」 って怒られてしぶしぶ従ったみたい。 もみじちゃん、強い…。     「くん!!見ててねー!!」 VR!! 「こら兎丸!まじめにやれ!!」 練習試合をしてる時にくんにVRをしてみせてたら怒られた。 でも、くんがぅお!?すごいな比乃〜!って笑いかけてくれたからよしとしよう。 えへへ、くんに誉められちゃった〜♪ 本日の練習も無事終了。(途中先輩達がくんにちょっかいかけに行ってたけど…) 僕の帰り道の方に用事があるとかで、僕は途中までくんと一緒に帰ることになった。 何だか監督が一緒に帰りたそうにしてたような… 監督には悪いけど…、今日は諦めてもらおう。       「ぷはー…今日もいっぱい走ったよ〜」 楽しかった〜♪ 僕がそういうとくんが可笑しそうに笑って、 「お疲れさん。比乃は走るの好きなのか?」 「うん!大好きだよ!それに…」 「それに…?」 「この足でずっと走ってきたんだもん。僕は…走っていかないと…」 これからも、止まるつもりはないから。   くんはふと真剣な顔をしてそっか…と呟いた。 しばらく何かを考え込むようにしてたけど、突然にはっと笑い、   「じゃ、俺も一緒に応援するとするかな。比乃の足を。」   「……え……?」           くん、今、…何て…? 「長い間一人きりでっていうのも、疲れるだろうが。 比乃にはあんなにいい仲間達がいるだろ? たまにはあいつらに頼ってもいいと思うぞ、俺は。 …それに……もしお前が望むのなら、俺がいつでも一緒に走ってってやるよ。」 だからお前は心置きなくその足を信じてやれ! 何も、心配しなくてもいいから。 そんな不安そうな顔してるなよ。 そう言って僕の頭をくしゃっとなでてくれた。 あの、優しい手、で。 「………!?う、うん!!」 ありがとう、くん。 「礼なんて、言うことじゃないだろ」 も一回優しく笑って僕の頭をなでるくん。 何回お礼言っても足りないよ! だって、それはね、僕がずっとほしかった言葉なんだよ。 知ってた? 僕が抱きつくと、ぽんぽんと背中を叩いてくれる。 そのしぐさも言葉も、すべてが僕を支えてくれてるみたいで… ああ、もう。 そんなことしたら僕調子に乗っちゃうよ? それでもいいの…? ダメって行っても待ったなしだからね!
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