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― 逢魔が時にそこに迷い込んではいけないよ ―
Drive Shadow
「グッモ――ニン!我が弟よ!!」
えらく騒々しい音で目が覚めた。
思いっきり不機嫌な顔をしてムクリと起き上がる。
ドアのほうを見ると、目を楽しそうに輝かせて人の悪い笑みを浮かべる兄(25)一人。
「お目覚めに紅茶はいかがかな?」
ずずぃっとさしだされた紅茶のカップからはいい香りがただよってくる。
が、その液体は見るからに怪しげな色をしていた。
「…、…これは何かな?」
「紅茶」
「んな怪しげな色の紅茶があるか――――!!!」
輝き100%の笑顔にすかさず回し蹴りを叩き込む。
兄はひょい、とそれをかわすと
「お前のために腕によりをかけていれた紅茶だというのに…兄さん悲しいなぁ」
「ほーぅ…じゃあその兄さんが入れたおいし〜ぃ紅茶の効能は?」
「なぁに、朝からちょっと幽体離脱しかけるぐら…」
「却下」
「何故!?」
「当たり前だ!!」
飲めるかそんなもん!
「え〜せっかく作ったのに〜〜にいさんせっかくがんばったのに〜」
「…子供かお前は…」
ブーブーとブーイングを始めた兄にため息をつく。
と、ちょうど下から母のどこか力の抜ける声が聞こえてきた。
「お兄ちゃ〜ん、りゅうくーん!朝ごはん出来ましたよ〜」
兄はその声にフ、とどこかニヒルに笑って、
「弟よ。続きはまた後でだな!!」
「続かんでいい!!」
ドゴスッ
爽やかな朝の風にのって鈍い音が響きわたった。
「あっはっはっはっはっは!!」
「…藤代、笑いすぎだ…」
大学の一室。
机をバンバンたたいて笑っている友、藤代に向かってぐったりしながらそう呟く。
藤代はまだひーひーいいながら、
「わ、悪い。でもいいじゃないか愛されてて」
「よくない!」
毎朝あの調子だぞ!?
絶対愛情とかじゃねぇよ…
しかもあの騒ぎで携帯忘れてきたし…
友はふ、と菩薩様のように微笑んでポフ、と俺の肩に手を置き、
「…いいんだよ。
俺が楽しいから」
「お前それでも友達かーーーーーー!!!」
「ははははは!俺の楽しみのためには友の1人や2人犠牲になってもいいのさ!」
言い切りやがった!
しかもめちゃくちゃいい笑顔で!!
「…も、いい…」
「まぁそう落ち込むなよ」
さらにぐったりした俺を見てニヤニヤしながら言う。
誰のせいだ誰の!!
そういいたいのをぐっとこぶしを握ってこらえる。
俺の周りはこんなんばっかりか!?
「と、おい。今日バイトの面接あるとか言ってなかったか?」
『バロン』っていう喫茶店の。
…。
「あ―――――!!しっ、しまった!!!」
あわあわと慌てて席を立つ。
「ありがとな藤代!俺先行くわ」
「おぅ、気ぃつけてなー」
いろんな意味で、と言いながら手をひらひらふる藤代に苦笑して教室を出た。
自転車でシャーッと飛ばしながら道を行く。
ちらりと左手首の時計を見ると、針はちょうど5時を指していた。
面接は、5時40分から。
…大丈夫そうだな…
ほっと胸をなでおろし、少しだけスピードを緩める。
「今度こそ受からないとなぁ…」
アルバイトをするのは独り立ちの資金のため。
いつまでも家にいるわけにはいかないしな。
が、中々上手くいかないのもまた現実。
というのも、兄貴と父さんがことごとく邪魔するからなんだけど。
どうやら彼らは自分達の勤めている会社でバイトさせたいらしい。
初めにそれを断わって自分で見つけようとした結果↓
1回目 喫茶店のアルバイト。
…は、何故か面接に飛び入りした兄にぶち壊され、失敗。
2回目 今度こそ!と思い申し込んだ豆腐屋さんでのアルバイト。
…は、父さんに横からかっさらわれ、失敗。
父さんと豆腐屋の親父さんが、何でそんなに仲いいんだよ!と言いたくなるほどの
意気投合っぷりだった。
3回目 夜間工事のアルバイト。
…兄が裏から工事会社に手をまわしてつまはじきに。
4回目 スーパーでのレジ打ち。
これは何とか妨害をくぐり抜けて受かったものの、父さんが客に紛れ込んで大騒ぎを
起こし、その責任を取らされて辞職。
「………。」
わが家族ながら見事なコンビネーションだ…。
さっき藤代が「色んな意味で」と言っていたのもこれのことだったりする。
…まぁ、解決方法がないわけじゃないけど…。
でも父さんたちの会社でアルバイト始めたら、そのままずるずる会社に就職、ってことに
なりそうで怖いんだよなぁ。
そんなに俺を手元においておきたいか…
それもあの人たちのことだからただ俺で遊ぶためだけに!!
あぁこれは確信を持って言えるね!
「…今までの順番からいくと、次の妨害者は兄貴か…」
…。
ハッ!
い、いかん!!弱気になるな俺!!!
今回は隠して隠して隠してきたから絶対大丈夫だ!
「お…っと」
キキィ!と音を立てて自転車を急停車させる。
目の前には『工事中につきご協力を』という黄色い看板。
その向こうでは工事のおっちゃんたちが忙しく働いている。
「ここ以外の道だと遠回りになるな…」
とりあえず、横の小道にそれて進むこと3分。
また。
「…工事中か」
気を取り直して別の道へ。
「…………………………工事中」
……。
ぐあーーー!!と頭をぐしゃぐしゃして叫ぶ俺の目の端をふっ、と黒いものが横切った。
思わずビクッとしてそちらを見ると、毛並みのいい真っ黒な猫が塀の上からこちらを見下ろして
いた。
右目が緑で、左目が金色。
オッドアイというやつだろうか。
ずべてを見透かしているような二対の目に、なんとなく不安な気分になる。
柔らかそうな尻尾が時折思い出したようにパタ…と動く。
…………いやいやいや、待て!
何で俺はこんなところで猫と見つめあってるんだ!!
「そうだよ、何とか『バロン』までたどり着かないと!」
って、もう25分かよ!?
まーずーいー!!
おたおた慌てる俺を黒猫君がじぃっとみつめる。
「なぁ、お前『バロン』までの道とか知らないよなぁ」
「…。」
猫相手に何聞いてるんだ俺は。
質問してしまってからハッと我に返る。
あーほら変なこと聞かれて猫君困ってるよ。
…。
困ってる…って…黒猫君、もしかして言葉分かってるのか?
と、黒猫君はぐぅーっと伸びをすると、優雅な足取りで塀から飛び降りた。
ちらり、とこちらを一瞥すると、てこてこと脇の小道を歩いていく。
数歩行ったところで立ち止まり、ぽかんとしている俺を振り返って早く来い、と言わんばかりに
なーん、と短く鳴く。
「…着いて来い…ってこと、か?」
緑と金の両目が、きらりと輝いたような気がした。
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[あとがきと言う名の懺悔室]
やってしまいました新連載(?)
…のはーーーーー!!何やってるんだ俺ぁ!
まだ完結してないものばっかりだって言うのに。
さらに自分の首を絞めてどうする!
はぁはぁぜぃぜぃ…
…。
うふふ、ふふふ…あ、ちょうちょ……(現実逃避)
こんなのですが気長にお付き合いいただければ幸いです(涙)
